アーティストの生き方
って結構憧れませんか。私だけですか。
イラストレータや漫画家、歌手とかそういう、
自分にしか表現できない夢中にできるものを持っていて、観ている人に直接的に感動を与えられる人。
私はRADWIMPSが好きなのだが、初めて「最大公約数」を聞いた時は鳥肌が立った。
何を求めるでもなく 無理に意味を添えるでもなく つまりは探しにゆこう 二人の最大公約数を
「自分と相手との最大公約数」なんて、どうやったらそんな天才的な発想生まれるねん。
アーティストとは、歌や絵を創り出す才能やスキルが必要不可欠な、特別な存在だと思っていた。
それが最近、この本のおかげで少し見方が変わった。
中高生向けに優しく書かれていそうだし、
要は「各々の自由な視点で美術作品を鑑賞しましょうね」とかそういう俗っぽいことを強調するだけでしょうかね、
と全然期待せずに読んだ。
が、気持ちいいくらいに完璧に裏切られた。
本書の概要をざっくりいうと
についてを、伝統的な西洋美術史に大きく影響を及ぼした6つの20世紀の現代アート作品を取り上げ講義形式で解説されている。
本書に取り上げられている作品はどれも超有名な作品ばかりだから、読んでいて眠くなるような細かい美術のウンチクはなく、「13歳からの」と謳っているように非常に読みやすい。
むしろ20世紀の現代アートに至るまでの歴史は、科学技術や社会情勢の変化と密接に絡んでいて目から鱗な話ばかりだった。
例えば、「上手な絵とは?」と言えば、大体の人はこのようなリアルな絵を思い浮かべる
要は、実物を出来るだけ見えるままに再現した「写実的な絵」だ。
遠近法を多用したルネサンス期を代表する初期の西洋美術は、非常に描写が細やかで立体感・奥行きまで正確に表現されている。
しかし、19世紀に「あるもの」が普及したことにより、アーティスト達は自身の存在意義を問われ、「アートとは何か?」という「探究の根」を伸ばし始める。
そして、本書で取り上げられる現代アート作品をはじめとして、これまで美術という殻を破るような作品がどんどん編み出されていく。
- 20世紀を代表するアーティストがどのように思考し「探究の根」を張り巡らせ、本書で紹介される作品という「花」を編み出したのか。
- パブロ・ピカソの作品はこれまでとどう違うのか?
- 一度は目にしたことがあるようなアメリカン・ポップアートはこれまでの美術の常識をどう覆したのか?
このような話は美術に触れる学生にとって足算するくらい当然の知識なのだが、それ以外の専攻の人はほとんど知らないのではないだろうか*1。
この本を読んで、アートそのものに関する技術以上に、学んだことがある。
それは、アート思考を通じて
ということだ。
「アーティスト」は、目に見える作品を生み出す過程で、以下の3つのことをしています。
1. 自分だけのものの見方で世界を見つめ、
2. 「自分なりの答え」を生み出し
3. それによって「新たな問い」を生み出す
「アート思考」は、こうした思考プロセスそのもののことであり、
ビジネスだろうと学問だろうと人生だろうと、『自分なりの考え』を持つために必要な思考
であるということ。
絵を上手に書いたり、美しい造形物を作る人が、アーティストではない*2。
正解を追い求めるのではなく、「自分なりの視点」で探究し、「自分なりの答え」を表現する人が、アーティストである。
それは例えば、
ユーザーが見やすいサイトを作ろうとするWebデザイナーや、
何か新しいアプリケーションやプロダクトを作る開発者はもちろんのこと、
- 新しいビジネスを創り出す
- 新規企画案を考える
- 自分の考えをSNSで発信する
ことをしている人も、「自分なりのものの見方」という「表現の花」を咲かせているアーティストなのだということ。
「いや違うだろ、『アーティスト』なんてカッコつけたこと言ってんじゃねえ」「じゃあこのブログ書いてるお前はアーティストかいな」と思われた方。
分かる。私は自分がアーティストだなんて言えん。
「アーティストと呼べるかどうか」は本質的ではなくて、
「アーティストっぽく考える(=アート思考)」ことができるかどうかが重要なのです。
というわけで、決意したこと。
- 社会人になって、目の前のタスク、言われることをただこなすだけにならない。
- ブログや日記などを通じて定期的に「考え」「表現する」
もし共感してくれて実際に本読んでくれたら嬉しいです! 感想をこっそり寄せてくれたらもっと喜ぶ。
ここまで読んでくださりありがとうございました〜
*1:もちろん、私もこの本を読んで初めて知った。
*2:アンディ・ウォーホル「マリリン・モンロー」なんかは、見ての通りオリジナルではない