日々の学びと煩悩

医療経済の嘘

という本について知ったこと、考えたことを延々と述べます、はい。

きっかけの記事が、これ。 diamond.jp

この記事の内容が面白すぎて、タイトルの原著を即購入した。 特に惹かれたのが、このグラフ

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出典:「病院がなくても住民の健康は変わらない!?」 医療と医療費の不都合な真実とは

いや、世の中こんな綺麗な相関関係示すものあります?

このグラフが示すのは、
病床数が多いほど、一人当たり入院医療費が高い
ということ。 始めて読んだ時は普通に驚いた。
総医療費じゃなくて一人当たり入院医療費なんだから、病床が多いだろうが関係なさそうではないか。

よくよく見てみれば、人口が多い埼玉県や神奈川県と言った都内よりも、高知県や鹿児島と言った地方の県のほうが3倍近く病床がある。高齢化の違いがあるにせよ、都内の方が患者の絶対数は多いのではないか。なんかおかしい

このグラフの背景には複雑な要因が絡んでいて、一概にどうと結論づけることはできないけれど、この本で紹介されていて、私もなるほどと思った要因は2つ。

  1. 日本の保険制度
  2. 医療というサービスの特異性

1について

日本の健康保険というサービスは本当にありがたいもので。

私たち国民の医療費の負担額はたったの3割で、残りの7割は健康保険料*1で賄われ国からの税金やら借金やらで保険金として医療機関に払われる。この払われるお金は「診療報酬」と呼ばれたりする

(医療機関は、この診療報酬で、検査代、職員たちの給料など全て賄う必要がある)

日本人は3割しか負担しない。そして、保険証さえあれば(大学病院とかでなければ)紹介状なしに自由に診察が可能である。

1万円の医療サービスを、3千円で受けられるということ。

1万円のフレンチを、3千円で誰でも食べられるよ〜〜と言われたら…そりゃ食べに行くよね?

だから、風邪を引いただけでも、少し体調が悪化したと感じても病院へ行く人は多い。 そして医療費がかかっていく。

すると国は「医療費が高い!!!!!」と言って、診療報酬の抑制(なんかニュースとかでよく聞くやつ)、つまり医療機関に払われる報酬を下げようとする。

医療機関は困る。より患者を集めて収入を増やさなければ。

患者に検査や入院を勧める

医療費が高くなる

医療費を抑えようと国が動く

という悪循環が起こる

普通だったらここで市場の原理というものが働いて、「儲からなくなったら潰れる」「サービス品質が悪ければ潰れる」ことが起きる

ただ、ここが落とし穴で

2. 医療というサービスの特殊性

が関わっている

具体的に言うと、医者と患者間の情報の非対称性である。
患者は、医者から提示される医療サービスの品質を判断することが難しい。
医者から、「念のため入院をしましょう」と言われたら、なんとなく「先生が言うんだし、そうしよう」となんとなく従ってしまう。

結果、病院は患者を集めることで何とか経営を継続し、薄利多売*2を生み出す。

(地方とか高齢者が多いところの方が、医療経営が厳しいところが多い=薄利多売な病院が多い、とグラフを解釈している。)

じゃあ海外はどうなってるの??

と思い調べてみたが、ドイツやフランスでも国民健康保険は導入されている。ただ、かかりつけ医への受診が原則で、紹介状なしで専門医へ直接受診すると約5割負担だったりするらしい。

そもそもアメリカは公的年金に加入する人が限られていて、多くは民間保険に入っていたりする*3

なんとスウェーデンなんかは家庭医療を推進した結果、20年間で70%も病床を減らしたらしい。

長くなってしまった。

じゃあどうするか?

という話だけど、

  • 健康保険を廃止する

なんて過激な方法もありだけども、価値共創というサービスデザインの観点からすると

  • (ITの力で)患者が診断結果についてビジュアルで、感覚的に理解できるようにし、医者と必要な医療サービスについて対等に議論できるようにする。(そうすることで情報の非対称性を是正する)

とか

  • いざ病院いこうと思ってスマホで診察予約しようとする時に、サイトが自動で「今の症状はなんですか?」とか聞いてきて、軽い症状だったら解決策提示してきてくれたりする

ような、患者も医療サービスに自然と参画できるシステムがあったりするといいのかもね、と思ってみた

でもやっぱり必要なのは

  • それなりに私たちの負担額あげて(かかりつけ医方式でもいいけど)、医者の給料あげること

なのでは?とは思う
働きに見合うお金もらえなかったらやる気でなくね???
お医者さんの夜勤の時給は、アルバイトと同じくらいと聞いたことがある(うろ覚え)
こんな崇高な職業が、こんな安くていいのだろうか

本当に高度でありがたいサービスなのだからそれに見合う対価も払われないと、医者のロイヤルティ*4も落ちて患者のために本当に必要時な医療を提供しようとする意思も薄れてくる*5?↓

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出典:一橋大学大学院准教授・藤川佳則氏が選ぶ、 サービス・マネジメントの変遷を学ぶための論文

もちろん高度な医療技術のおかげで世界一の長寿国になることができたこともある。
しかし長寿国になればなるほど、医療の需要過多問題は重くなっていくような気がする

必要な人に最適な医療サービスを

実現するには法と技術の力で人の意識を矯正する必要があるのかも

内容モリモリでまとまりがなくなったな。より詳しく知りたかったらぜひ手に取って本読んでみてください。

結論

風邪くらい自分で直そう

(p.s) 結局本読み直したりで内容まとめるの2時間くらいかかった。

*1:税金と健康保険料を混同していたなぁ、コメントありがとうございます!!

*2:https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=52143?site=nli

*3:https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=58038?site=nli

*4:言い方が適切ではないかもしれない。もちろん医者ならば患者を助けたいという使命は持ち続けなければならない

*5:医学的に必要なことと、患者が求めることのバランスはとても難しいけど