日々の学びと煩悩

IRSSM10に参加した [まとめ編]

IRSSMとは

www.irssm.org

IRSSMはInternational Research Symposium in Service Management*1の略称であり、Journal of Service Managementのエディターのトップ(Prof. Jay Kandampully)が議長を務める比較的歴史の浅いサービスマネジメントの国際会議。

特徴としては、若手研究者の発表を推奨していて、研究者同士のネットワークづくりを促進している

We aim to ensure:
01. Papers presented at the IRSSM Symposium are further developed based on internal reviews to prepare them for publication in academic journals.
02. A focus on creating working relations between service researchers and established service researchers.
03. The Symposium fosters academic debate and the establishment of research collaborations across regions and countries.

参加するに至った経緯

これはなんとなく残しておく。

工学系だと修士には努力すれば学会発表する人が多く、私にとっても修士の間に国際学会でプレゼンテーションをすることは自然な目標だった。

サービスサイエンス系の大学院に入り、分析をゴリゴリしていた5月、何か学会に出たいな〜と思っていたところ、共同研究者の方が、「こういう若手向けの学会ありますよ」とIRSSMのことを教えてくれた。

調べてみると、規模は小さそうだけどファシリテーターの方は著名な研究者ばかりで、しかも若手向けということもありちょうど良さそう。しかもドバイ!!憧れの中東!!!行きたい!!!
ということで、アブストを出すことにしたという。

しかし、この時、私は

理論的貢献<<分析で意味のある結果を出す

だと思っており、自分の研究の理論的立ち位置が明確でないまま、学会にアブストを提出してしまっていた。

なぜなら工学系だと、「〜〜で性能上げた!」「新しい〜〜を作って効果でた!」だけで学会に行けることも多く、理論的貢献の重要性はあまり学んでこなかった。

しかし、サービスマーケティングを含めた社会科学系は理論的貢献がとても大事(詳しくは下)

私はここをしっかり理解しないまま学会に応募した結果、フルペーパーを執筆する際にとんでもなく苦労することになった*2

学んだこと

サービスマーケティング研究における理論的貢献の大切さ

小さい学会だしそれなりにまとまっていれば論文もなんとかなるだろう、と甘く見ていたら、飛んだ間違いだった。

理論を詰めるのがそれはそれは大変。

共同研究者の方から辛辣なコメントをいただいては直し、論旨の抜本から修正することになり、またさらに修正し…を延々と繰り返した。

結局、本番当日の30分前まで他の人の発表そっちのけでスライドを直したり英語のセリフを直し続けて本番に望むことになった…

サービスマーケティングを含めた社会科学系の研究においては、既存研究の中での自分たちの研究の立ち位置が明確でなければならない

なぜ自分たちがこの研究をする必要があるのか。
その研究分野に対する自分たちの貢献は何なのか。

yamauchi.net

つまり理論的貢献がめちゃくちゃ重要で、ただ新しいことをやりました〜〜だけじゃだめだということをこの発表準備を通じて学んだ。

発表レベル自体は日本と海外そこまで変わらない(?)

もちろん今回のIRSSMでの何個かの発表を見た感想に限る。
しかもこんな新米のペーペーが偉そうに言えることではないのだけれど。

発表者自体はアジア中東7割、他はヨーロッパぼちぼちといったところか。

素直な印象として、研究のレベルや、内容の完成度自体はこっちの方が上なのでは…?と思えたのは意外な収穫だった。

というのも、今回は

  1. 会議のレベル自体は高くない
  2. 若手研究者が多い
  3. 私的にはめちゃくちゃ頑張って準備した

から少しはそう思えるのかもしれない。

英語力を磨いてアメリカヨーロッパで研究経験を積み重ねれば世界で戦っていけるのかなぁ、とぼんやり思ったりした。

それでもやっぱり世界で戦うのは茨の道

世界で戦う=海外のトップジャーナルに論文が掲載されること

それには、世界水準=アメリカやヨーロッパの目線
で研究することが必要なんだなぁと実感した。

これは、1とも関連していて、ワークショップでも学んだことでもあって長くなりそうなので 詳しくは、後日「IRSSM10 - ワークショップ編-」にも改めて書こうと思う

当日

工学*3だと修士でも国際学会でバンバン研究発表をする人が多かったから、私もそのノリで(普通に)応募したつもりだった。

しかし当日、蓋を開けてみれば、発表者は全員Ph.D以上で、修士は私一人だった。

もちろん日本人は私と共同研究者の方以外いない(あと1人、社会人ドクターの方が発表だけ聞きにきていた)。

そもそもサービスマーケティングの分野では、研究発表はPh.Dからが一般的らしい。知らなかった……

Ph.D過程以上のため、研究者としてキャリアを積もうとしている人が大半。

以下、特筆すべき特徴

トップリサーチャーとの距離が近い

この学会には、10名くらいのトップリサーチャーがワークショップの講師および会議の司会進行役として参加している。

規模が小さい学会で、会場はホテルだった。同時に行われるセッションも2つ(2部屋)しかない。

半径10m以内にトップリサーチャーが2人は座っているってすごくないか。

若手研究者にとっては、トップリサーチャーと交流できるだけでなく、研究のアドバイスを直にもらう、大変貴重な機会だと思う。

共同研究者のかたも、トップリサーチャーとこんなに近い距離で議論できる学会はないと言っていた。

私すら、Coffee Break中に歴代引用件数1万件を超えるエディター*4から、「Hello. How are you ?」と話しかけられたくらいだ。

お笑い養成所にいるペーペーの芸人がダウンタウンに話しかけらるとはこのことか。

びっくりしてしまってその時は「ハ・ハ・ハロー、アイム アー アキエ」と酷いカタコトしか返せなかった。

もし私がサービス研究者を目指す前提で参加していたら、いろんな研究者に話を聞いていたし、ディスカッションも積極的に行い、より有意義な時間にしてただろう。
今の私には勿体無いくらいの環境だった。

研究発表に対する温かい目とフィードバック

若手研究者の発表が主なので、「まぁ若いしこんなもんだよね」みたいな感じでトップリサーチャーは見てくれる。

すごいなと思ったのが、発表したPhD研究者に対して1対1でエディターの人が指導していたこと。

ダウンタウンがお笑い養成所の芸人を直々に指導してる

指導教官同士のコネの影響もかなり大きいらしいが、私は「は〜IRSSMすげー」と感心するばかりだった。

ちなみに、2セッションしかないとなると必然的に、1セッションあたりの聴衆は10人はいる。
サービスマーケティング大きい国際学会になると、一つの発表あたり2人とかもあるらしいから、密度の高さはこれまたすごいこと。

私の発表にも10人くらいが出席してくださり、質疑応答でもファシリテーターのジャーナルエディター、若手研究者の方含めて数名が質問や丁寧なフィードバックをくれた。

結果

恐縮ながら、投稿論文はHighly Commended Awardをいただくことができた。

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ただ正直これは私の共同研究者の方の賞と言っても過言ではない。

こんな至らない者にコミットしていただき、色々アドバイスをくださってその人には頭が上がらない。

こうして形に残せてその方の分も含めてホッとしたというか。

まとめ

IRSSMは予想以上に濃密な体験だった。

IRSSMでの研究発表を通じて、サービスマーケティングという世界で研究者としてやっていくということがどういうことなのか、少しでもイメージがついた気がする

研究の面白さと過酷さも。

今回はかなり共同研究者の方に頼ってしまったので、次回は少しでも自分の力で(卒業までには)論文投稿を達成できたらと思う。

ただ、流石にちょっと疲れたので10月いっぱいは他のこと(就活や授業、別プロジェクト)に力を入れていこうかな…

以上、IRSSMまとめ編読んでくれてありがとうございました〜〜

メモ書きみたいな感じだけれど、IRSSMという学会とサービスマーケティング研究の雰囲気が伝わってくれたらと思います〜〜

※ 「学んだこと」はかなり私見に基づく意見なのでふ〜〜んくらいに思ってくれると嬉しいです笑

コメント等々ウェルカムです

*1:h-5 indexは37, Journal of Service Research やJournal of Retailingと同じレベルくらい

*2:共同研究者の肩のサポートもありなんとか完成できた

*3:大学の学部自体は工学系に所属していた

*4:Prof. Jay Kandampullyさんのこと