日々の学びと煩悩

IRSSM10に参加した [ワークショップ編]

これは「IRSSM10 - まとめ編- 」での「学んだこと」に関連して、特にワークショップでのことに特化した記事です。

マニアックだなぁと思いつつ。学んだことはね、アウトプットしたいしね。

もしかしたらサービスの研究に興味ある人もいるかもしれないじゃないか?(自己満)

前回の記事はこちら〜

IRSSMというサービスマネジメントの国際会議についてと、総評を自分なりにまとめてます

wimper-1996.hatenablog.com



目次

ワークショップってなに

トップリサーチャーによる、若手研究者向けの研究講義
研究発表会前日に開かれることが多い

www.irssm.org



知りたかったこと

海外のトップリサーチャーの「研究の仕方」

学んだこと

1. 研究の大変さは海外も日本でも変わらない

日本は海外と比べて仕事の生産性が低い低い言われていたから、研究という職業でも、海外リサーチャーは

「休日はリフレッシュ!研究=仕事なんてするわけないでしょ!平日に効率的に研究よ!」みたいなイメージだった。

でも意外にも、トップリサーチャーの人は日々の時間のほとんどを研究に捧げているようだった。

「若い頃?覚えてないくらい、ずっと研究していた」「土日も研究していたよ」とさらりと言っていて、少し意外な気持ちになった。

ああ、研究の世界はどこもHard workingが前提なんだな。

ワークショップ自体も終了時刻は1時間以上伸びたことに驚いた。

終了時刻を守らないのは日本くらいだと思っていたけど、それはビジネスの世界だけのことなのかもしれない。

2. やっぱり研究はアメリ

研究は、何か大きな問題を解決するというモチベーションからスタートして、それを小さい問題に落とし込んで研究を行う。
そしてImplicationでは、その小さな問題を再び一般化(Genelarize)し、新しい視座を提供しなければならない。

ここで重要なのは、一般かどうかの基準は、「世界基準=アメリカ(英語圏)」ということを思い知った

厳しいことだけど、例えば日本の特定のサービス利用者をサンプルにデータを取って、〇〇がわかりました。だからこうだと思います。と書いても、トップジャーナルからしてみれば「アジアの一国の特定のシチュエーションでしか言えてないじゃん」と言われてリジェクトされる

私の例だと、日本の宅配サービスでのデータを分析しているのだが、そもそも海外は日本の宅配サービスが通用しない。

ドアの前に荷物を置くのでそもそも再配達という概念がなかったり、自分の家以外で受け取ることがデフォルトだったりする。

このシチュエーションで顧客のサービス参加に関する研究を行っても、「なんで日本の宅配?他のサービスがあるのでは?=Methodologyが適切じゃない」とコメントされる可能性が高い

トップジャーナルへの投稿を視野に入れるなら、データを取る対象も世界水準でみて一般的か考える必要があるんだなぁと感じた。

そしてもう一つ。サービス研究の世界は狭い。研究者同士、仲がいい(みんな積極的に繋がろうとしている結果だけど)。トップリサーチャー同士の共同研究は当たり前だし、トップ雑誌に載っている研究者はだいたいみんな知り合いなのではないか?

トップリサーチャーが蓄積してきたノウハウは強力であり、それに加えてコネというものも存在するらしい。IRSSMでも、しょぼい発表にも関わらず指導教官が有名だったら名だたる研究者がアドバイスをくれていた。逆にプレゼンがとても上手くてもそこまで有名じゃない研究生の発表にはそこまでフィードバックをあげていなかったり。

だから、本気で世界のトップリサーチャーになりたければ、色んな国際学会で海外の研究者に自ら英語で進んで話しかけ、顔を覚えてもらい、自分の研究を知ってもらったりする必要がある。

そんなんで覚えてもらうのはもちろん至難の業で、世界で戦うにはやっぱりヨーロッパアメリカの大学で留学なりなんなりして、その分野のコミュニティに入るのが最も正統的なルートなのだなとぼんやり理解した。

ちなみにIRSSMでは、こんな若手の私がJoSMのエディターと普通に話すことができたが、これは冷静に貴重な機会らしい。距離が本当に近い。

3. A researcher's journey = "Joining ongoing dinner party"

研究は、「進行中のディナーパーティに加わること」である

パーティにはいくつかのテーブルがある。そのテーブルそれぞれが、異なるジャーナルを表す。

研究し、論文を書くということは、そのいずれかのうちのテーブルに途中参加すること。

どんな会話が行われているか、その中で自分がどんな話題を提供することができ、場を盛り上げられるか。

自分の研究の立ち位置と、理論的貢献がすごく重要。

  1. テーブルごとに食べている料理が違う = ジャーナルごとに目的や論文の構造がちがう。まず、どのテーブルに行くかを決めること。そして、そのデーブルでのルールを知ること。フレンチを食べているのに、中華料理が乗ったお皿を持っていけば、それだけで門前払いを食らう。

  2. 今進行している会話を理解した上で、自分の考えを述べる。ただ自分の意見を述べるのはご法度だし、他人の意見を繰り返してもただの「空気読めない人間」である。これは特にLiterature Reviewにも通ずる

    ◯「Aさんはこう言っていて、Bさんはこう述べている。しかしここが明らかにされていないから、私はここに着目する」
    × 「Aさんはこう言って、Bさんはこう言っている」これはただのサマリー
    Literature Review=Summeryではない。既存の研究で何が明らかになっているか、何が明らかになっていないかを明らかにし、自分のリサーチトピックやイシューを導き出すものでなくてはいけない。

自分のキャリアに対する影響

海外のトップリサーチャーによるリアルな話で、サービスマーケティングという分野で研究者としてキャリアを積むとはどういうことなのか、少しイメージができたと思う。

IRSSMの議長でJournal of Service ManagementのエディターでもあるDr. Jayが「研究は大変なことだけれど、諦めないでいって欲しい」と言っていたように、「英語圏を含めどの国の人でも研究はやっぱり大変なんだな」という印象を受けた。

ただみんな、それ以上に「研究が楽しい」から続けている。

自分が研究者として今後もサービスマーケティング研究を楽しく続けられるかと言われたらうーん、Noかな。

研究が自分のキャリアに活きることは間違いない。

ただ、それを生涯の仕事にできるかと言われたら、それは私にはやはり難しいような気がする。

まだ英語論文一回しか書いたことないくせに何言ってんだ若造が、って感じかもしれないが、しかしそれでも間違いなく難しい笑

特に理論的貢献が難しい。

先人がこれまで積み上げてきた膨大な知恵が既にあるわけだ。

そこに、自分が何か新しい理論を付け足す…何か一つ絞り出したとして、それを何回もできる気が全くしないし何十年と楽しめる未来が想像つかない。

それより、日々変化する社会と進化する技術をリアルタイムに追って学び続け、それを社会問題解決に繋げていく方が、楽しいような気がする。

結論

研究者はすごい。